奥澤貫司さんは、
2018年に仕事で滞在した新庄市でご縁をつなぎ、コロナ禍が明けた2023年5月に新庄市に移住されました。地域おこし協力隊に着任し、移住交流推進事業に取り組む奥澤さんにお話しを伺いました。
-奥澤さんは新庄にお住まいですが、もともと移住をしたかったわけではなかったですよね?結果的には移住されたわけですが、移住に至った経緯など教えていただけますか?
2018年に仕事の関係で1カ月半新庄市に滞在したことがありました。2023年の頭に当時お世話になった方から連絡があって、雪遊びもできるし遊びがてら仕事を手伝ってくれって言われて、新庄駅前のマンスリーを用意してもらったんです。最初1か月の予定だったんですけど、東京の仕事はリモートで出来ていたので「別に長くなっても大丈夫かな」くらいでいたんですけど、更に1カ月延長ってなって、だったらこっちに拠点があった方が良いなと。
周りの人に相談していたら、「地域おこし協力隊ってのがあるぞ」って教えてくれた方がいたんです。最初は制度そのものも知らなくて、ダメ元で応募したら採用してくださったというのが経緯です。
-雪崩的に協力隊になったような感じがしますが、それって面白かった?
面白かったですね。もともと自分が環境を変えるのが好きで、大体3年おきくらいに仕事内容がガラリと変わるような転機があって、今回もたまたまそれぐらいのターニングポイントだったのかなぁって思ってます。やっぱりもともと新庄が好きだったということもありますし、居心地もいいですしね。
-もともと新庄が好きだったっていうことですが、どういうところが良かった?
自分の場合は街っていうよりここの人たちですね。自分はかなり運がいい方だなと思っているんですけど、出会った人がすごい良い人たちばっかりで、たとえば飲み屋のお店をやってる人とか、年代が近い人がまず多くて、自分で何かやってる人が多かったんですよ。会社の社長さんもそうだし、飲食店やってるだとか、農業ドローンをやってる人だとか、アーティストタイプの人とか色々いて、そういう人たちが色々世話を焼いてくれたんです。これまでしたことのなかった体験とか、触れることのなかった業界や職種の人たちとも触れ合えたし、そういう面で面白いなって思って。
-そういう人たちとはどうやって出会っていったんですか?
それは初めて新庄に来た時に、お手伝いした会社で働いていた鮭川の人が色々紹介してくれたんですよ。で、飲み屋に連れてってくれて、飲み屋のマスターを紹介してくれて通うようになって、でそのマスターが店に来る別の人を紹介してくれて。全部そこですね。
あと最近だと、人を紹介してくれるのは仲良くなった焼き鳥屋のおばちゃんですね。結構仲良くさせてもらうようになって、協力隊にもなったし、かっこいい名刺ももらったので、その名刺をお店に置かせてもらって、「誰か面白い人来たらとりあえず渡しておいて」って。で、でたまに「今こんな人来てるけど」って電話をくれるんですよ。家に居たら出かけていって、一緒に焼き鳥食べてってそんな感じですね。
-現在のお仕事について教えてください。
地域おこし協力隊のミッションとして移住定住があるんですけど、移住フェアの出展などのイベント以外で主軸の業務があるわけではないので、地域資源の探究っていうかたちで、地域の企業さんや農家さんのお手伝いをしています。農業でもなんでもやります。引っ越しの手伝いもやるし、除雪も今年手伝おうかと思ってますし、家の解体もやりました。解体屋さんのお手伝いですね。
-それは依頼があってやるの?
そうですね。楽しいからっていうのもあるんですけど、わらしべ長者的な感覚で僕はいて、一生懸命お手伝いして、金銭はもらえないですけど、そのかわり面白い人を紹介して下さいって。で、ある程度色んな人を紹介してもらうと、自分今こんな仕事やってるんですって相談した時に、僕じゃ思いつかないアイデアをくれたり周りがしてくれたりするんです。僕の替わりにアイデアを出してくれる人をいっぱい探しています。
-そういったアイデアはどういう時に発揮されるの?
そうですね、たとえば僕が協力隊になったときには、新庄市にはお試し住宅(移住体験住宅)をやろうって構想があったんです。東山団地、僕が入っている定住促進住宅の一室をリノベしてやるって話になっていたんです。
でも「それってどうなの?」最初に聞いた時に思ったので、色んな人にそういう話をしていたんです。そうしたら「うちの地区には公民館がないんだけど、なんか公民館兼用のお試し住宅をやってる地域もあるらしいよ」って人づてに聞こえてきたんですよ。それを役所に「こんな話を聞いたんですけど、どうですかね?」って訊いたら、予算の関係もあるからすぐに動けるか分からないけど、とりあえずそのアイデア良いと思うから研究してみようか?みたいな感じになったんですよ。それが実現できるかどうかってこの先の話しなんですけど、人からもらったアイデアが、役所からも「良いんじゃない?」って言ってもらえたんですよね。
-公民館だと、お試し住宅に入居していても地域の人と繋がれそうだし、面白いアイデアですよね。
そうですよね。それで、新庄には新庄まつりがあるんですけど、祭りの準備を2カ月間くらいかけて各町内の公民館でやるじゃないですか。それが公民館がない地区だと、若連のメンバーが会社やってるからそこの事務所をお借りしてとかみんなやりくりしてるらしくて。だから公民館があると助かるらしいんですよ。新庄のこの辺の人たちとしては。それを聞いてそういうのもこの町独独のニーズなのかなって思ったんですけど、僕には全然思いつけないアイデアじゃないですか。
-そういう人脈があると、これから新庄に移住したいなって考えている人が来た時に、こんな人がいるよってつなぎ役ができそうですね。
確かにそうですね!
そういう面で面白いなって思ったのが、東京の移住フェアに行ったときに相談者から言われたのが、「移住体験ツアーに参加したいって思っているんだけど、おもてなしとか楽しい観光とかじゃなくて、地域のコミュニティと共同作業するような企画で、その地域のキーパーソンと繋がれるようなイベントってないですか?」って。調べたらやっぱりあるんですよやってるところ。新庄市もそういうのやったらいいんじゃないかなって。そういう体験ツアーだったら、僕も色んなキーパーソンを紹介出来そうな気はしますね。
地域のキーパーソンとも出会える、人とつながりやすい街。
-奥澤さんがお住いの新庄市の魅力を教えてください。
新庄市は、意外と若い人で目標持って自分で何かをやってる人が多い気がします。多いっていうか、そういう人が目立ってる気がします。
新庄に来る前は田舎ってイメージが強かったんですけど、今は田舎ってイメージがかなり払拭されています。というのも、たとえばタトゥアーティストだったり、絵描きのアーティストだったりとか、音楽もそうですけど、若い人が好きなサブカルみたいなのをすごい一生懸命頑張ってる人たちが何気に多くて。だから仕事以外の趣味だったりプライベートの時間も充実して楽しめてるのが一番大きいかなと思います。たぶん他の田舎って言われている地域だったら、サブカル的なものを楽しもうと思ったら仙台に行くだとかちょっと足を伸ばさないと難しいと思うんですけど、新庄だと普通に市内で楽しんでしまえるっていうのが好きなところですね。
だから本当は若い人にはチャンスだと思うんですよね。周りの人の話を聞いていても、ちょっとやれば、人が少ないからすぐ目立つじゃないですか。ビジネス的にも注目されるっていいことだと思いますし、割と若い人が応援してくれるんだって聞いています。目立つから繋がりやすいっていうもの好きなところですね。
―新庄市への移住を考えている人、移住したばかりの人がいたら奥澤さんはどこに案内しますか?やっぱり人なのかな?
そうなんですよ。僕が新庄で人の輪を広げる時にキーパーソンだった方が何人かいるんですけど、その人たちを紹介してあげますね。社長やってる人もいるし、自営業、飲食、飲み屋、建設系の社長さんだったりとか。
何故その人たちを僕がセレクトするかって言うと、その人たちがすごい世話を焼いてくれたからなんですよ。世話焼きの人たちなので、紹介したら自分が来た時と同じようにすごい世話を焼いてくれるんじゃないかなって、安心感がすごいあります。
移住して最初の時点で、市や地域に対して「あーなんか入りにくいな」って目に見えない壁を作ってしまったら、それを壊すのはなかなか難しいと思うんですよ。最初に安心できればそのあと割とスムーズに溶け込めるんじゃないかなと思ってるんですけども。
―新庄市は今後どんな地域になるといいと思いますか?
僕の希望であれば、もうちょっと若い人が増えて欲しいです。
で、最近気になるのが、こっちの同年代の人は結婚して子どもがいる人ばっかりで、子どもの話しが結構耳に入って来るんですよ。でも今の新庄の子ども達ってどこで遊んでるんだろうって気になってきちゃって。目にすることないので。だから子ども達の遊び場とか、子ども達が楽しんでる様子が街中にあるといいなと。そんな場所がもっと増えたらといいんじゃないかなって、自分子どもいないんですけど!
でもそういう場所がもっと増えたら、きっと必然的に若い人も多くなりそうですし。個人的に公園ってめっちゃ好きなんですよ。公園が沢山ある街になるといいなって思います。
―奥澤さんが新庄で実現したい暮らしを教えてください。
地元の人と結婚して家庭を築きたいですね。お婿さんもいいかも!
それで折角新庄に来たので、都会的な暮らしよりも自然を感じられるような暮らしをしたいなと思っています。休日は山に遊びに行ったり、川に遊びに行ったりとか自然を楽しんで暮らしたいですね。
インタビューをしていて、奥澤さん自身、気が付いたら新庄市の地域おこし協力隊になっていたのかなと思わせるほど、仕事や暮らし方へのアプローチが柔軟かつ自然体だなと感じました。自分でコレと決めつけずに飛び込んで、ご縁から生まれる出会いや偶然を楽しむことができるのは一つの才能だなと思いました。
意識的に、いや無意識的にでも、彼がつなぎ役となって生まれた出会いから思いもよらないポジティブな化学反応が起きるのかもしれません。意外と当事者になっているかもしれませんが、そんな化学反応を目撃できることが楽しみです。
美味しい焼き鳥を食べながら新庄との出会いを深めたい方は、奥澤さんを訪ねてみてはいかがでしょうか?
取材日:2023年12月13日
聞き手:梶村勢至(最上暮らし連携推進員)
栃木県佐野市出身。東京で不動産や金融の仕事に従事。2018年に仕事で新庄市に滞在し交流を深める。コロナ禍を経て、2023年5月に地域おこし協力隊制度を活用して新庄市に移住。不動産の仕事で得た知識を活かしながら移住交流推進業務に取り組んでいる。